腎臓病診療における新型コロナウイルス感染症対応ガイド

腎移植患者におけるCOVID-19対応 transplant

腎移植レシピンエト、腎移植ドナーそして腎移植希望者に関する注意点を記載する。

1. 腎移植レシピンエトの方1-3

① 腎移植後に服用している免疫抑制薬やステロイド薬のために免疫力が低下している。従って、COVID-19感染症に対して十分な予防策をとる必要がある。混雑している場所への出入りはできるだけ回避し、外出する場合はマスクを付ける。近距離での長時間の会話は感染リスクを高める。外出後には手洗いを徹底する必要がある。

② 自身の判断で免疫抑制薬・ステロイド薬を減量したり、中止したりすると拒絶反応を引き起こすおそれがある。服用している免疫抑制薬・ステロイド薬が心配な場合は必ず移植主治医と相談する必要がある。

③ 感染した場合、一般の人と同様に、発熱、咳、嗅覚異常などの症状がみられる。しかし、一部の人では症状が軽症の場合もある。一度感染すると一般の人より退院までの時間がかかり、また、ウイルスを長く排泄する特徴もみられる。

④ 感染後は、移植専門医のアドバイスに従い、一部の免疫抑制薬やステロイド薬の調節が必要となる。入院施設に移植専門医がいない場合は、移植専門医との連携をとり治療する必要がある。感染後にみられるサイトカインストームを抑制する目的もあり、完全に免疫抑制薬などを中止することは危険かもしれない。エキスパートオピニオンではあるが、一般的にはミコフェノール酸モフェティルを減量あるいは中止、mTOR阻害薬を加えるあるいは増量する対応が考えられる。

⑤ COVID-19感染症以外にも、インフルエンザなど発熱や呼吸器症状の出現する疾患がある。鑑別が必要な場合は、担当の移植主治医と相談の上、検査及び治療を受けるようにする。

⑥ 移植患者に対して治療薬として有効なものは確定されていないが、世界的にはレムデシビル(ベクルリー🄬)に関する治療成績の報告が比較的多い。使用を希望する場合は、厚生労働省による WEB 調査に参加することで厚労省から直接配分を受けることになっている。

⑦ 日本移植学会の統計では、日本では2020年9月7日現在、腎移植患者(87.1%)を中心に31人の移植患者がCOVID-19感染症に罹患している。50~60歳代(58.1%)に発症が多くみられる。14人(15.1%)が治癒し、1人(3.2%)が再陽性、2人(6.5%)が死亡している。国際移植学会が掲載しているデータでは、腎移植患者の死亡率は約20%であり、日本より遥かに高い4

2. 腎移植ドナーの方 1-3

① 腎移植ドナーの方も慢性腎臓病(CKD)の状態であり、基礎疾患があることになる。特にCKD以外に、高血圧や糖尿病などの持病があるドナーは、感染予防策を遵守する必要がある。

② レシピンエトの方と同居している場合、お互いに感染症状に注意して生活する必要がある。

3.腎移植を希望しておられる方 1-3

① ドナー候補とレシピエント候補の方は、院内感染、退院後の市中感染の可能性を理解して移植に臨んでいただきたい。移植前にCOVID-19感染症チェックシートによって、感染状況・感染リスクの評価を受ける必要がある。状況が許せば移植予定日から逆算して14日間外出を控え、自宅または医療機関で経過を観察することが望ましい。

② ドナー候補者とレシピエントは、症状、背景、曝露歴などから新型コロナウイルス感染症のリスク評価を行うだけでなく、術前に鼻咽頭拭い液でのPCR検査(核酸増幅検査)を行うことが望ましい。

③ 移植待機中にCOVID-19感染症に罹患した場合は、PCR検査で陰性が確認されてから、1~3カ月過ぎてからでないと腎移植は受けられない。

参考としたWEBサイトを以下に紹介する。